① 核心ルール:側方間隔と法律
最重要現行法の状況(〜2026年3月)
現行規定
「できる限り安全な速度と方法で進行」
道路交通法上、自転車への側方間隔の具体的数値規定なし
問題点
「安全な間隔」が曖昧 グレーゾーン
個人の主観差が大きく、取り締まりが難しかった
違反した場合
安全運転義務違反(道交法70条)として立件可能
事故が起きた場合は過失運転致死傷罪が成立し得る
改正後ルール(2026年4月〜)
1.5m原則の側方間隔
(自転車が未認識の場合)
(自転車が未認識の場合)
1.0m自転車が認識している
場合の側方間隔
場合の側方間隔
30km/h間隔確保できない場合
の上限速度目安
の上限速度目安
新義務の内容
十分な間隔がない場合→間隔に応じた安全な速度で進行 罰則付き
対象
追い越し・追い抜き両方に適用(全国一律)
自転車側もできる限り左端に寄る義務が課される
側方間隔と危険度の目安(視覚化)
※バーの長さはイメージです。実際の必要間隔は速度・道路幅・相手の状態などによって変わります
② 実際の事故事例・判例
事例分析CASE 1
吹田市 自転車死亡事故
状況
大型貨物自動車が幅員4mの狭い道路で自転車(72歳)を追い抜こうとした
側方間隔
60〜70cmの間隔で時速5kmの低速で並走
経緯
有蓋側溝上に退避させた後に追い抜き開始→ふらついて転倒→左後輪に轢過
結果
被害者死亡。業務上過失致死罪で有罪(最高裁S60.4.30)
教訓
「追い抜きを暫時差し控えるべき注意義務があった」と判断。低速でも60〜70cmは不十分
CASE 2
兵庫 ひき逃げ逮捕事例
状況
車両が自転車を接触・転倒させた後、現場から逃走(救護義務違反)
逮捕理由①
救護義務違反(道交法72条1項)→1年以下の懲役または10万円以下の罰金
逮捕理由②
報告義務違反(道交法72条1項)→3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金
複合刑罰
死亡の場合は最大30年以下の拘禁刑(過失運転致死+ひき逃げの合算)
教訓
自転車でも「軽車両」=車両運転者として同じ救護・報告義務。逃げると罪が重くなる
その他主要判例まとめ
高松高裁 S42.12.22
側方間隔1mでも有罪 重要
具体的状況(速度・道幅・相手の状態)によって1mでも「不十分」と認定された
高松高裁 S38.6.19
バスが至近距離で自転車を追越し→有罪
速度が高い場合、物理的距離だけでなく相対速度も重要な判断要素
最高裁 基準
「約1m以上の側方間隔」が最低ラインの目安として示されている
ただしあくまで下限。状況によっては1m超でも注意義務違反が認められる可能性あり
酒気帯び自転車(S46年)
側方1.3mでも「不十分」と認定 要注意
相手が酔っていてふらついているなど不安定な状況では必要間隔が広がる
③ 「1.5m」という数値の根拠
なぜ1.5m?心理的根拠
実験結果
自転車同士で危険を感じ始める間隔は1.5m
山中・半田・宮城(2003年)のニアミス指標による研究
自動車の場合
速度差が大きく圧迫感も強いため1.5m以上が望ましい
物理的根拠
0〜50cm
強風・スリップストリームでラインがブレる
50〜100cm
歩行者・飛び出し自転車の緊急回避に必要な幅
100〜150cm
前方自転車の転倒時の道路中央側への回避に必要な幅
思いやり1.5m運動(愛媛発)
発端
愛媛県が2016年より推進開始
条例の「安全な間隔」を具体化するため1.5mを目安に設定
位置づけ
「絶対的な科学的基準ではなく目安」と愛媛県自身が明言
道路幅・速度・状況によって必要間隔は変わる
世界各国の側方間隔基準
🇫🇷
フランス
1〜1.5m
市街地1m
郊外1.5m以上
郊外1.5m以上
🇬🇧
イギリス
1.5m
法令で明記
🇦🇺
オーストラリア
1〜1.5m
60km/h未満1m
以上は1.5m
以上は1.5m
🇺🇸
アメリカ
約91cm〜
3フィート〜4フィート
州によって異なる
州によって異なる
🇮🇪
アイルランド
1.5m
法令で明記
🇯🇵
日本(改正後)
1〜1.5m
2026年4月〜
義務化(罰則付き)
義務化(罰則付き)
④ 罰則・刑事リスク一覧
逮捕・起訴リスク違反・事故時の罪と罰則
| 罪名 | 条文 | 場面 | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 側方安全間隔不保持義務違反 | 改正道交法(2026年〜) | 間隔不十分のまま追い越し | 反則金7,000円(検討中) |
| 安全運転義務違反 | 道交法70条 | 危険な追い越しで事故なし | 3ヶ月以下の拘禁刑 または5万円以下の罰金 |
| 過失運転致傷罪 | 自動車等処罰法5条 | 追い越し時に自転車を転倒・負傷 | 7年以下の拘禁刑 または100万円以下の罰金 |
| 過失運転致死罪 | 自動車等処罰法5条 | 追い越し時に自転車を死亡させた | 7年以下の拘禁刑 |
| 救護義務違反(ひき逃げ) | 道交法72条1項 | 事故後に負傷者を救護せず逃走 | 10年以下の拘禁刑 または100万円以下の罰金 |
| 報告義務違反(当て逃げ) | 道交法72条1項 | 事故を警察に報告せず逃走 | 3ヶ月以下の拘禁刑 または5万円以下の罰金 |
| 過失致死傷+ひき逃げ(合算) | 複合適用 | 死亡事故+逃走 | 最大30年以下の拘禁刑 |
⑤ 「1.5m空けなかった」だけで逮捕される?
判断基準逮捕リスクが高い状況
ケース①
接触・転倒事故が実際に発生した 高リスク
過失運転致死傷罪。被害者が死亡・重傷なら逮捕の可能性が大きく上がる
ケース②
事故後に現場から逃走した(ひき逃げ)最高リスク
救護・報告義務違反が加わり刑が大幅に重くなる。逮捕率も上昇
ケース③
相手が高齢者・子ども・不安定な状態の自転車
判例上、不安定な相手への追い抜き自体を「差し控えるべき」と判断されることがある
間隔不足だけでは逮捕されにくい
原則
事故が起きなければ刑事逮捕には至りにくい
2026年4月改正後は反則金(行政処分)が主な対応になる見込み
改正後の運用
まず反則金→悪質な違反・危険運転は刑事事件化
「交通の危険を生じさせる恐れがある場合は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」
結論
「1.5m空けない ≠ 即逮捕」
「事故が起きたとき・逃げたとき = 逮捕リスク大」
「事故が起きたとき・逃げたとき = 逮捕リスク大」
⑥ ドライバーが取るべき正しい行動フロー
1
自転車を発見したら:まず側方間隔を確認
1.5m以上確保できるか?対向車・道幅・相手の状態を確認する
↓
2
間隔が確保できない場合:速度を落とす(目安30km/h以下)
狭い道・対向車あり・高齢者・ふらつきがある場合は無理に追い越さない
↓
3
どうしても間隔確保できない:追い越しを待機する
自転車が左に寄るタイミング・対向車が通過するタイミングを待つ。焦らない
↓
4
万が一接触・転倒が発生した場合:必ず止まる
「気づかなかった」でも後日逮捕される可能性がある。その場で停車・確認が義務
↓
5
救護・通報を行う(道交法72条の義務)
①負傷者の救護(119番)②警察への報告(110番)→これをしないとひき逃げになる
⚡ 境界線まとめ:「逮捕」される条件とされない条件
間隔不足だけ = 原則・逮捕なし
2026年4月以降は反則金7,000円が主な処分。事故が起きなければ刑事事件化しにくい。
事故発生 = 過失運転致死傷罪の可能性
死亡・重傷なら逮捕リスクが大幅上昇。「1m以下」は判例上ほぼ有罪水準。
事故後に逃げる = 最大30年の拘禁刑リスク
ひき逃げは罪が2〜3重になる。「気づかなかった」でも後日逮捕されるケースあり。
高齢者・不安定な自転車への追い越しは要注意
判例上「追い越しを差し控えるべき」と認定されることがある。1m超でも有罪になった例あり。
「1.5m」は目安であって絶対値ではない
速度・道幅・相手の状態によって必要な間隔は変わる。状況によっては1.5m超でも不十分な場合がある。
2026年4月〜 法改正で明文化・罰則付き
「十分な間隔がない場合は間隔に応じた安全な速度で進行」が義務化。違反は行政罰・刑事罰の対象に。