過失割合 — 全パターン一覧
別冊判例タイムズ38号準拠 / 直進バイク vs Uターン四輪車
① 転回中の事故(最も多い)
② 転回終了直後の事故
修正要素(過失の増減)
| 要素 | 誰の過失が変わるか | 変化量 |
|---|---|---|
| 転回禁止場所でのUターン | 転回車の過失 ↑↑ | +20% → 0:100も |
| 転回危険場所(見通し不良・交通量多) | 転回車の過失 ↑ | +10% |
| 合図なし(ウインカー未使用) | 転回車の過失 ↑ | +10% |
| 大型車がUターン | 転回車の過失 ↑ | +5% |
| 転回車に著しい過失・重過失 | 転回車の過失 ↑ | +10〜20% |
| バイクの著しい速度超過(15km/h超) | バイクの過失 ↑ | +10〜20% |
| バイクが渋滞をすり抜け走行 | バイクの過失 ↑ | +10% |
| バイクのヘルメット不着用(頭部負傷時) | バイクの過失 ↑ | 損害額から減額 |
💡 単車修正(バイク優遇)
バイクは四輪車より事故時のダメージが大きく身体的弱者として過失が低めに設定される「単車修正」が考慮されるのが原則。ただしバイク側がUターンした場合は逆に70%の過失が付く(基本割合:車30:バイク70)。
ドライブレコーダーの役割
客観証拠として過失割合・刑事処分に直結
ドラレコが証明できること
- ウインカーの有無と時機:合図なし・遅すぎを映像で立証。転回車の過失を大きく加重
- 衝突時の双方の位置・速度:バイクの速度が争点になる場合、映像から推定可能
- 転回開始タイミング:バイクが十分な近距離にいるのに転回開始したことを証明
- 目視・後方確認の有無:転回前に車が止まらず確認もせず転回したことを可視化
- 転回禁止標識の記録:現場が禁止区域かどうかを映像で確認。過失100%になりうる
証拠としての注意点
✓ 視野角内は客観証拠
✓ ひき逃げ犯特定に有効
✓ 加害者の主張を否定
✗ 視野角外は映らない
✗ 上書きで消失のリスク
✗ 提出は任意(強制不可)
📌 ポイント
事故直後は映像データを即座に保全する。常時録画型では上書き消去されるため、専用ボタンで保護するか SDカードを抜いて保管する。示談交渉・刑事処分どちらにも活用できる。
行政処分 — 違反点数と免許への影響
公安委員会による処分 / 刑事処分とは独立して発生
違反点数の計算式
FORMULA
総点数 = 基礎点数(違反内容)
+ 付加点数(被害の程度)
▶ 安全運転義務違反:基礎 2点
▶ 転回禁止違反(単体):2点
▶ 軽傷(15日未満):付加 2〜3点
▶ 軽傷(15〜30日):付加 4〜6点
▶ 重傷(3ヶ月以上):付加 9〜13点
▶ 死亡事故:付加 13〜20点
+ 付加点数(被害の程度)
▶ 安全運転義務違反:基礎 2点
▶ 転回禁止違反(単体):2点
▶ 軽傷(15日未満):付加 2〜3点
▶ 軽傷(15〜30日):付加 4〜6点
▶ 重傷(3ヶ月以上):付加 9〜13点
▶ 死亡事故:付加 13〜20点
免停・免取の基準(前歴0回)
| 累積点数 | 処分内容 |
|---|---|
| 6〜8点 | 免許停止 30日 |
| 9〜11点 | 免許停止 60日 |
| 12〜14点 | 免許停止 90日 |
| 15点以上 | 免許取消(1年〜) |
※前歴1回以上はより少ない点数で処分が加重される
Uターン事故(人身)の典型パターン
| 事故内容 | 推定点数 | 処分 |
|---|---|---|
| 軽傷(15日未満) 過失あり |
2+2=4点 | 処分なし (前歴0の場合) |
| 軽傷(15日未満) 一方的過失 |
2+3=5点 | 処分なし〜6点注意 |
| 軽傷(15〜30日) 一方的過失 |
2+6=8点 | 免停 30日 |
| 重傷(3ヶ月以上) 一方的過失 |
2+13=15点 | 免許取消 |
| 死亡事故 一方的過失 |
2+20=22点 | 免許取消(2年欠格) |
その他の行政上の影響
- 人身事故で処分歴がつくと次回更新でゴールド免許を失う
- 任意保険の等級が3等級ダウン→翌年以降保険料が大幅増加
- ゴールド免許割引が消え保険料が二重に跳ね上がるケースも
- 前歴があるほど低い点数でも処分が加重される。累積管理が重要
刑事責任
過失運転致死傷罪・道交法違反
適用される罪名
- 過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法5条)
7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 - 転回禁止違反(道路交通法違反)
3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金 - 合図義務違反(ウインカーなし)
反則金6,000円(普通車)・違反点数なし
罰金の目安
| 被害の程度 | 罰金相場 |
|---|---|
| 軽傷(起訴の場合) | 12〜20万円 |
| 重傷・複数被害者 | 30〜50万円 |
| 死亡事故 | 50〜100万円+懲役も |
⚠ 注意
軽傷かつ被害者との示談が成立すれば不起訴(罰金なし)になるケースが多い。被害者への誠実な対応と早期示談が刑事処分を左右する。
損害賠償額 — 民事上の責任
過失割合に応じて減額される / 自賠責+任意保険でカバー
損害項目一覧
| 損害項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療費 | 入院・通院費用、手術費、薬代など全額 |
| 休業損害 | 事故で仕事を休んだ分の収入減 |
| 入通院慰謝料 | ケガの期間・程度に応じた精神的損害 |
| 後遺障害慰謝料 | 後遺症が残った場合(等級1〜14級) |
| 逸失利益 | 後遺症・死亡による将来の収入損失 |
| 物損(バイク修理) | バイク修理費・全損の場合は時価額 |
| 葬儀費用 | 死亡事故の場合:150万円程度 |
損害額の目安(バイク被害者)
数十万
軽傷
(治療1ヶ月以内)
(治療1ヶ月以内)
100〜
500万
500万
重傷
後遺症なし
後遺症なし
1,000万
〜
〜
後遺障害
残存時
残存時
過失相殺の計算例
CASE:バイク被害者の損害が700万円の場合
過失割合 バイク10:車90
▶ バイク被害者が受け取れる額:
700万円 × 90% = 630万円
+ 加害者(車)も損害があれば
逆に10%分を被害者に請求可能
(例:車修理200万円の場合 20万円を請求)
▶ バイク被害者が受け取れる額:
700万円 × 90% = 630万円
+ 加害者(車)も損害があれば
逆に10%分を被害者に請求可能
(例:車修理200万円の場合 20万円を請求)
⚠ 任意保険未加入は最悪
自賠責保険の支払限度額:傷害120万円・後遺障害75〜4,000万円・死亡3,000万円。これを超える部分は加害者が全額自己負担。任意保険必須。
実際の裁判例
横浜地裁 平成20年11月6日判決ほか
横浜地裁 H20.11.6(Uターン車 vs 直進バイク)
- 道路左端に停止していた車がレンタルビデオ店へ向かおうとUターン
- 右後方から直進してきたバイクと衝突。後遺障害が残る重傷
- 基本過失割合:直進バイク10:Uターン車90を適用
- 双方の修正要素の主張で過失割合が争点に→裁判で最終確定
大阪地裁 H26.9.9(片側2車線)
- 片側2車線の第1車線を走行中の車が右ウインカー出してUターン開始
- 第2車線を走る後続普通乗用車と衝突
- 判決:Uターン車80:直進車20(ウインカーあり・2車線での難しさを考慮)
💡 判例から学ぶ
基本割合は出発点に過ぎない。ウインカーの有無・現場の道路構造・双方の速度など個別事情によって割合は変わる。ドラレコ映像があれば主張の立証が格段に容易になる。
Uターン事故を防ぐための実践チェックリスト
ドライバー全員が今日から実践できる行動
転回前の確認(車側)
- 転回前に標識を確認 → 転回禁止なら絶対にしない
- ミラーだけでなく目視で後方確認。バイクは死角に入りやすい
- 早めのウインカー(30m前)で後続に意思を伝える
- 後続車が十分遠い・いないことを確認してから転回開始
- 見通しの悪い場所・交通量の多い場所では転回を諦める勇気を持つ
バイク側の回避策
- 前方の車がウインカーを出したら速度を落として注視する
- 対向車線側に停車・徐行している車は「Uターンするかも」と警戒
- 速度超過は過失を加重させる。制限速度を守ることが身を守る
- ヘルメットは正しく着用。不着用は損害賠償額の減額要因になる
- 渋滞のすり抜けは過失加重。視認性も下がり危険
事故後の対応フロー
- ①被害者の救護最優先。救護しないとひき逃げとなり別途処罰
- ②警察・救急に通報。その場で示談はNG(証拠隠滅と受け取られる)
- ③ドラレコ映像を即座に保全。SDカードを抜いて保管
- ④任意保険会社に連絡。示談交渉を保険会社に任せる
- ⑤過失割合に納得できない時は弁護士へ。弁護士費用特約を活用