ドラレコ 交通事故解説

なぜUターン事故は起きるのか
直進バイクとの衝突から学ぶ

過失割合 / 行政処分 / 損害額 / ドライブレコーダーの役割

Uターン禁止違反 過失割合 10:90 ドラレコ証拠 行政処分 最大免取 損害額 数百万〜 道交法25条の2

── 典型的事故シーン(片側1〜2車線道路)──

← 対向車線
自車線 →
🏍️ ──→
直進バイク
🚗
↺ Uターン中
転回車
💥
転回中の基本過失
車90%
バイク10%
転回禁止場所なら
車100%
バイク0%
法的根拠
道交法
25条の2

── Uターン事故が起きる理由 ──

CAUSE 01
後方確認の甘さ・死角への過信
ミラーだけで目視確認せず転回。バイクは車体が小さく死角に入りやすい。特に近距離・高速バイクへの過小評価が多い。
CAUSE 02
「今なら行ける」という誤判断
後続車との距離を十分と思い込み転回開始。バイクの速度・接近速度を過小評価し衝突。右後方の確認不足が典型。
CAUSE 03
合図(ウインカー)なし・遅すぎ
ウインカーを出さずに突然の転回、または直前すぎる合図。後続バイクが回避行動を取れず衝突に至る。
CAUSE 04
転回禁止・危険場所での強行
標識による転回禁止場所・交差点付近・見通し不良場所での強行Uターン。最も過失が重くなるパターン。
⚖️
過失割合 — 全パターン一覧
別冊判例タイムズ38号準拠 / 直進バイク vs Uターン四輪車
基本+修正要素
① 転回中の事故(最も多い)
直進バイク Uターン車
10%
90%
基本割合:直進バイク10:Uターン車90 ※転回は「交通の流れに大きく逆らう行為」(道交法25条の2)のため転回車の過失が大きい
② 転回終了直後の事故
直進バイク Uターン後の車
20%
80%
転回完了後でも車側に80%の過失。完了後は直進車の回避義務もやや増す。
修正要素(過失の増減)
要素誰の過失が変わるか変化量
転回禁止場所でのUターン 転回車の過失 ↑↑ +20% → 0:100も
転回危険場所(見通し不良・交通量多) 転回車の過失 ↑ +10%
合図なし(ウインカー未使用) 転回車の過失 ↑ +10%
大型車がUターン 転回車の過失 ↑ +5%
転回車に著しい過失・重過失 転回車の過失 ↑ +10〜20%
バイクの著しい速度超過(15km/h超) バイクの過失 ↑ +10〜20%
バイクが渋滞をすり抜け走行 バイクの過失 ↑ +10%
バイクのヘルメット不着用(頭部負傷時) バイクの過失 ↑ 損害額から減額
💡 単車修正(バイク優遇) バイクは四輪車より事故時のダメージが大きく身体的弱者として過失が低めに設定される「単車修正」が考慮されるのが原則。ただしバイク側がUターンした場合は逆に70%の過失が付く(基本割合:車30:バイク70)。
📹
ドライブレコーダーの役割
客観証拠として過失割合・刑事処分に直結
証拠能力
ドラレコが証明できること
  • ウインカーの有無と時機:合図なし・遅すぎを映像で立証。転回車の過失を大きく加重
  • 衝突時の双方の位置・速度:バイクの速度が争点になる場合、映像から推定可能
  • 転回開始タイミング:バイクが十分な近距離にいるのに転回開始したことを証明
  • 目視・後方確認の有無:転回前に車が止まらず確認もせず転回したことを可視化
  • 転回禁止標識の記録:現場が禁止区域かどうかを映像で確認。過失100%になりうる
証拠としての注意点
✓ 視野角内は客観証拠
✓ ひき逃げ犯特定に有効
✓ 加害者の主張を否定
✗ 視野角外は映らない
✗ 上書きで消失のリスク
✗ 提出は任意(強制不可)
📌 ポイント 事故直後は映像データを即座に保全する。常時録画型では上書き消去されるため、専用ボタンで保護するか SDカードを抜いて保管する。示談交渉・刑事処分どちらにも活用できる。
🚨
行政処分 — 違反点数と免許への影響
公安委員会による処分 / 刑事処分とは独立して発生
免停〜免取
違反点数の計算式
FORMULA 総点数 = 基礎点数(違反内容)
     + 付加点数(被害の程度)

▶ 安全運転義務違反:基礎 2点
▶ 転回禁止違反(単体):2点
▶ 軽傷(15日未満):付加 2〜3点
▶ 軽傷(15〜30日):付加 4〜6点
▶ 重傷(3ヶ月以上):付加 9〜13点
▶ 死亡事故:付加 13〜20点
免停・免取の基準(前歴0回)
累積点数処分内容
6〜8点免許停止 30日
9〜11点免許停止 60日
12〜14点免許停止 90日
15点以上免許取消(1年〜)
※前歴1回以上はより少ない点数で処分が加重される
Uターン事故(人身)の典型パターン
事故内容推定点数処分
軽傷(15日未満)
過失あり
2+2=4点 処分なし
(前歴0の場合)
軽傷(15日未満)
一方的過失
2+3=5点 処分なし〜6点注意
軽傷(15〜30日)
一方的過失
2+6=8点 免停 30日
重傷(3ヶ月以上)
一方的過失
2+13=15点 免許取消
死亡事故
一方的過失
2+20=22点 免許取消(2年欠格)
その他の行政上の影響
  • 人身事故で処分歴がつくと次回更新でゴールド免許を失う
  • 任意保険の等級が3等級ダウン→翌年以降保険料が大幅増加
  • ゴールド免許割引が消え保険料が二重に跳ね上がるケースも
  • 前歴があるほど低い点数でも処分が加重される。累積管理が重要
⚖️
刑事責任
過失運転致死傷罪・道交法違反
最大7年/100万円
適用される罪名
  • 過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法5条)
    7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
  • 転回禁止違反(道路交通法違反)
    3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金
  • 合図義務違反(ウインカーなし)
    反則金6,000円(普通車)・違反点数なし
罰金の目安
被害の程度罰金相場
軽傷(起訴の場合)12〜20万円
重傷・複数被害者30〜50万円
死亡事故50〜100万円+懲役も
⚠ 注意 軽傷かつ被害者との示談が成立すれば不起訴(罰金なし)になるケースが多い。被害者への誠実な対応と早期示談が刑事処分を左右する。
💴
損害賠償額 — 民事上の責任
過失割合に応じて減額される / 自賠責+任意保険でカバー
軽傷〜数千万円
損害項目一覧
損害項目内容
治療費入院・通院費用、手術費、薬代など全額
休業損害事故で仕事を休んだ分の収入減
入通院慰謝料ケガの期間・程度に応じた精神的損害
後遺障害慰謝料後遺症が残った場合(等級1〜14級)
逸失利益後遺症・死亡による将来の収入損失
物損(バイク修理)バイク修理費・全損の場合は時価額
葬儀費用死亡事故の場合:150万円程度
損害額の目安(バイク被害者)
数十万
軽傷
(治療1ヶ月以内)
100〜
500万
重傷
後遺症なし
1,000万
後遺障害
残存時
過失相殺の計算例
CASE:バイク被害者の損害が700万円の場合 過失割合 バイク10車90
▶ バイク被害者が受け取れる額:
 700万円 × 90%630万円

+ 加害者(車)も損害があれば
 逆に10%分を被害者に請求可能
 (例:車修理200万円の場合 20万円を請求)
⚠ 任意保険未加入は最悪 自賠責保険の支払限度額:傷害120万円・後遺障害75〜4,000万円・死亡3,000万円。これを超える部分は加害者が全額自己負担。任意保険必須。
🏛️
実際の裁判例
横浜地裁 平成20年11月6日判決ほか
判例
横浜地裁 H20.11.6(Uターン車 vs 直進バイク)
  • 道路左端に停止していた車がレンタルビデオ店へ向かおうとUターン
  • 右後方から直進してきたバイクと衝突。後遺障害が残る重傷
  • 基本過失割合:直進バイク10:Uターン車90を適用
  • 双方の修正要素の主張で過失割合が争点に→裁判で最終確定
大阪地裁 H26.9.9(片側2車線)
  • 片側2車線の第1車線を走行中の車が右ウインカー出してUターン開始
  • 第2車線を走る後続普通乗用車と衝突
  • 判決:Uターン車80:直進車20(ウインカーあり・2車線での難しさを考慮)
💡 判例から学ぶ 基本割合は出発点に過ぎない。ウインカーの有無・現場の道路構造・双方の速度など個別事情によって割合は変わる。ドラレコ映像があれば主張の立証が格段に容易になる。
🛡️
Uターン事故を防ぐための実践チェックリスト
ドライバー全員が今日から実践できる行動
予防対策
転回前の確認(車側)
  • 転回前に標識を確認 → 転回禁止なら絶対にしない
  • ミラーだけでなく目視で後方確認。バイクは死角に入りやすい
  • 早めのウインカー(30m前)で後続に意思を伝える
  • 後続車が十分遠い・いないことを確認してから転回開始
  • 見通しの悪い場所・交通量の多い場所では転回を諦める勇気を持つ
バイク側の回避策
  • 前方の車がウインカーを出したら速度を落として注視する
  • 対向車線側に停車・徐行している車は「Uターンするかも」と警戒
  • 速度超過は過失を加重させる。制限速度を守ることが身を守る
  • ヘルメットは正しく着用。不着用は損害賠償額の減額要因になる
  • 渋滞のすり抜けは過失加重。視認性も下がり危険
事故後の対応フロー
  • ①被害者の救護最優先。救護しないとひき逃げとなり別途処罰
  • ②警察・救急に通報。その場で示談はNG(証拠隠滅と受け取られる)
  • ③ドラレコ映像を即座に保全。SDカードを抜いて保管
  • ④任意保険会社に連絡。示談交渉を保険会社に任せる
  • ⑤過失割合に納得できない時は弁護士へ。弁護士費用特約を活用